1388人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は情けないが恐怖のあまり腰を抜かしその場から一歩も動けなかった。
「そうか……お前にはこいつの姿が見えるんだな?」
「え?ああ見えるけど??何で――」
僕の方に緋色が気を取られたほんの一瞬の事だった。
ゴォォーッ
と風を切る音と共に八つに分かれた尾が同時に緋色に攻撃を仕掛ける。
「危ないっ!!」
「くっ……!!」
緋色は瞬時に両手で体をガードしたが避け切れず後方にふっ飛ばされてしまう。
「古狸程度が、調子に乗るなよ……。ルビィ―“赤魂”を」
泥を拭いさり立ち上がった緋色に傍らで様子を見ていたルビィという名の美女が赤い小瓶を手渡す。
「緋色様、こちらでよろしいですか?」
「ああ“赤魂・血姫”(セキコン・ケッキ)か。こいつならこれで十分だろう」
そう言うと小瓶の栓を抜き取り中のモノをすばやく口に入れる。そして呪文を唱えた。
最初のコメントを投稿しよう!