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暗い…
目の前は真っ暗だ。
だが微かに何か見える。
誰かが自分を見下ろしている。
次第にその輪郭が見えてきた。
男だ。
見覚えのない男。見知らぬ男。
「大丈夫?」
彼が言った。
「ここは?」
「ビルの屋上だよ。君がその…」
「どうして。」
彼女はそう言って立ち上がり、彼の腕を握り潰すぐらい掴んだ。
「どうして助けるのよ。」
奈美は喚いたが男は冷静でいた。
「じゃあどうして死のうなんて考えた?」
「別に良いじゃない。誰も悲しまないわ。誰も気にしたりしない。」
「俺は気にする。」
「なんで?」
「生きてる俺が馬鹿みたいじゃない?」
「あなたにあたしの何がわかるのよ。」
「さあ、良くはわからないけど苦しんでることくらいならわかる。」
「……」
「殴れ。」
「へっ?」
「俺を殴れ。」
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