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ビルを出ると二人は近くのファミレスに向かった。
明るいネオンや街灯が彼女を現実世界に連れ戻した。
見上げればさっきまでいた場所は遥か上方にあった。
人なら誰もが一度は『死』について考えたことがあるだろう。
だが奈美は違った。
彼女は『生』について考える。
人が生き続けるのは何故か。
何を求め今を歩んでいるのか。
彼女にはその答えがわからなかった。
草薙は席に着くとコーヒーを二つ注文した。
彼の指は細くしなやかで長い。
奈美がぼっーと見つめていると彼が口を開いた。
「聞いてもいいかな。どうして自殺なんか?」
「嫌になったの。」
「何が?」
「全てよ。世の中全てが。」
草薙はその指で机を小突いていた。
一定のリズムで繰り返されるそれはメトロノームのようで眠りを誘う。
「親は?」
「いない。あたしが四歳の頃に消えたわ。それからはおばあちゃんに育てられた。そのおばあちゃんも死んで、その後は施設で。」
何を見ず知らずの人に話してるんだろう、と彼女は感じた。
だが見ず知らずの人だからこそ話せるかもしれない。
感情をぶつけることで気分が良くなるなら、思いきってぶつけようじゃない。
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