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時刻は午前一時を過ぎようとしていた。
店内には二人を除いて男性客一人だけだった。
たまにその男性がこちらを向くのが奈美は気に入らなかった。
「君が辛いと思うのは仕方ない。だけど、だからといって自殺をするのは違うんじゃないかな。」
草薙が言った。
「わからない…ねぇ、幸せって何?」
奈美はぼんやりとした顔を窓の外に向けた。
車のライトがちらつく。
その運転手にも人生があって当たり前のように毎日を生きている。
目指すところに何があるんだろう?
人は何を求め、何を望み、何を得るのか。
「それを見つけるために生きてるんじゃないかな。」
「あなたは幸せと感じたことがある?」
「どうだろ。あると言えばあるし、ないと言えばない。」
「何それ。」
「まぁ悩むなら楽しめってことだ。一度きりの人生だ。無駄にするのは良くないと思うけどね。」
彼はそう言って上着のポケットから煙草を取り出した。
「いい?」
奈美が頷くと彼は煙草に火をつけた。
「なんとなくわかった気がする。」
彼女が小声で言ったのを聞き、草津は上目遣いで彼女を見た。
「そっか。良かった。」
そう言うと彼は奈美の頭を撫でた。
幸せだった
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