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仕事が決まったのは、それから一週間後のことだった。
市内にある小さなバーのバーテン
それが彼女の新しい仕事だ。
オーナーは若く、一月前に店を開いたばかりだった。
初仕事の日、勤務時間よりも早くに店に着いた。
店にはすでに数名の客が来ており、中にはカウンターでベロベロに酔っているサラリーマンもいた。
「おはようございます。」
奈美はできるだけ元気よく言った。
「おはよう。早いね。」
オープン当時からバイトをしている男の人が言った。
バイトは彼と奈美二人だけだった。
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
感じのいい人だ、と思った。
これならやっていける気がする。
店に流れるバラードが気持ち良く感じられる。
ちょっぴり、幸せを見た瞬間だった。
この日は勤務時間を過ぎてからも懸命に仕事内容を覚えようと、率先して残業をした。
オーナーもそれを温かく受け入れてくれた。
こうして仕事初日は無事に終わった。
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