第6章『魔王と英雄と過去』

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「リューディア、結界を解いて下さい」 「わかったわ」 セリナが状況を理解したと表情から察したハイネはリューディアに指示を出す。 結界が解かれた瞬間、水晶が砕け散り、破片が人型に集まり、次の瞬間、人の姿を成した。 「…ふぅぅぅ…」 男の髪は、水晶の中にいた時とは違い紫から血のように赤黒く染まり、黒い外套を纏っている。 「……フゥゥ…ヤット目覚メラレタナ…」 そして男からはおぞましい殺気とくすんだ魔力が流れ出し、アイラとセリナは下唇を噛みながら武器をギュッと握る。 「《Accra》…"シン"はどうしたんですか…?」 ハイネは《Accra》を睨みながら言い、《Accra》は俯いて肩を震わせる。 「…ク…ククク…クハハハハハ!!シンだと?ククク…奴の魂は存外しつこくてな…今はじっくりじっくりじっくりじっくりじっくり…魂を闇に喰わせているところだ…」 《Accra》は壊れたように笑い、狂った眼でアイラとセリナを見つめる。 「ほぅら…貴様等の大事なご主人様はもう限界だぞ?どうにかしたらどうだ?できるならな…! この肉体はまだシンの物…この肉体を滅せばシンも死ぬぞ」 《Accra》はニヤニヤと笑いながら言うが、ハイネが冷たい笑みを浮かべて発した言葉に固まることになる。 「…魂を浄化する魔術、法術が…いや、魔法がないとでも?」
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