第7章『実力と疑惑』

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「…投影開始…」 ハイネは空中に描いた魔術陣に紙を当て、紙に魔術陣を焼き付ける。 ハイネ達がこの授業で使用している紙は一般的に魔力に反応して様々な色に染まる【魔紙】と呼ばれるものであり、『投影』とは、魔術陣のように効果など、方向性が定まった魔力を複写(コピー)し、魔紙のみならず、様々なものに刻むことができる。これは単純な魔力コントロールが重要なので、一般的には下級に位置する技術である。 「…完了…。続いて魔力注入…」 完全に紙に黒い線が焼き付けられたのを確認してからハイネは少量の魔力を注ぎ、立ち上がる。 「終了致しました」 ハイネは真っ直ぐにレイソルの下に向かうと、長机に紙を置き、魔術陣を発動させる。 魔術陣が淡く輝き、黒い光が球体と成って収束、どんどん縮小し、ビー玉程の大きさで留まる。 「ほう…ちゃんと属性が出ているな。よし、戻っていいぞ」 「はい」 レイソルは小さく感嘆の声を零し、黒い球体が消えたのを確認すると手元の帳簿に何かをサラサラと書き込み、ハイネを促す。 ハイネは一つ返事を返すと、後ろから来ていたレーナとルーカスを避け、悪戦苦闘しているであろうラルフ達の元へ向かう。 「ぁあ!?また失敗した…」 そんな呟きを零したのはフィンであり、ニルとミーシャ、ラルフ、アルは黙々と魔術陣を描こうとしているが、ニルとアル以外は書き終わった瞬間、魔力のバランスが崩れて魔術陣が霧散してしまっており、ニルとアルですら『投影』魔術は幾度も失敗し続けている。
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