第7章『実力と疑惑』

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「遅かったな」 闘技場に到着したハイネを一瞥してそんな言葉を零したのは、上から見たら擂り鉢状になっている闘技場の中心に立ち、金の装飾が為された紅の剣を持つルーカス。 「ルールは?」 ハイネにしては珍しく、用件だけを尋ね、闘技場の中心、ルーカスの前に立つ。その手にはいつの間にか白の(白桜)が握られている。 「この闘技場には特殊な結界が張られているからな。ルールは特に無い。使い魔はなし。どちらかが負けを認めるか、気絶したら負けだ」 「そうですか。なら本気でいけますね」 瞬間、ハイネから膨大な量の魔力ーーといっても封印を解いた時の半分にも満たないがーーが放出され、発せられる威圧感はラルフ達が座る観客席まで包み込む。 「…面白い!!いくぞアーデンベルク!!」 ルーカスも、驚愕に見開いていた眼を細め、負けじと魔力を放出し、口元を歪ませると、紅の剣を構え、地を蹴った。 「光よ…」 1秒とかからず自身の目の前に現れ、剣を振り下ろしたルーカスに内心少し驚きながらも、ハイネは身体を半身にして剣を避けると、ルーカスの顔の前で手を翳し、言葉を紡ぐ。 「『ライトショット』」 小さく、だが数個の光の弾丸がルーカスに飛来するが、ルーカスは上に飛び上がって回避する。 「ふっ!」 ルーカスは飛び上がると同時に短く息を吐き、身体を半回転させながら剣を振るうが、ハイネは刃の腹を裏拳で叩いて軌道をずらし、一回転。 遠心力を加えた回し蹴りでルーカスを吹き飛ばした。
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