第7章『実力と疑惑』

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「ぐっ……ッ!?」 綺麗に脇腹にたたき込まれた回し蹴りに、ルーカスは顔を歪ませながらも体制を立て直して着地、顔を上げるが、瞬間、闇の縄に体の自由を奪われる。 「貫け!『ライトランス』」 「…紅き水よ!俺を守れ!『レッドウォース』!」 体の自由を奪われたまま、ルーカスは詠唱を紡ぎ、ハイネが放った光の槍は地から吹き出した紅い水に防がれる。 「なる程…やはり魔法にも影響をきたしますか…」 ハイネは紅い水が光の槍を飲み込んだのを見ながら意味深に呟き、一度も振るっていない白桜を消す。 「…どういう…つもりだ」 紅い水が消えると、紅い剣を構えたままハイネを睨んでいるルーカスが現れた。 「『紅痕(ディル・スティグマ)』…」 「…ッ…!!!!?」 ふと、ハイネが呟いた単語にルーカスは眼を見開き、驚愕の表情を浮かべる。 あまりに小さい呟きだったため、観客席にいるラルフ達には急にルーカスが驚いたようにしか見えていない。 「何故…お前が知っている…?」 少しの沈黙の後、ルーカスが絞り出したのはそんな言葉だった。 「紅痕(ディル・スティグマ)は王家の者にだけ伝わる特殊な刻印だ。一般人であるお前が何故…」 ルーカスはいつになく饒舌に、しかし有無を言わさぬ表情と口調でハイネを問い詰めようとするが、ハイネは手を上に掲げることで制止させる。 「(スティグマ)は、世界に四つの種類があります」 「…そんなことは知っている。俺が聞きたいのはーー」 「順を追って説明しますよ」 ルーカスは既に知っていることをハイネが話し出すので苛々と文句を言おうとするが、ハイネはそれすら遮って言葉を紡ぐ。 「先ずは 深き闇と孤高の黒薔薇 黒痕(マスタ・スティグマ) 聖なる光と慈愛の十字架 白痕(ヴァン・スティグマ) 鮮血と強さの紅薔薇 紅痕(ディル・スティグマ) 静寂と知の蒼翼 蒼痕(カーム・スティグマ)」 ハイネは自身の目の前に黒、白、紅、蒼の色の文字を浮かばせると、紅以外を消す。 .
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