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「痕と呼ばれるこれらは、体内に存在する魔力が、何らかの要因によって異常をきたした場合に身体のどこかに現れる謎の痣…
と医学上では一般的には知られていますね」
ハイネは淡々と言葉を紡ぐが、医学上で一般的に知られているとはいえ、一般人ならその道を専攻でもしていなければ絶対に知らない筈の知識であり、実際に声が聞こえているラルフ達ですら訳がわからない、といった顔をしている。
「…ですが、実際は違う。王族である貴方なら知っているとは思いますが…
痕が発現する条件は一つ…"自意識を持つ"魔力が目覚めた時です。
それは痕を発現させた者しか知り得ず、総じて異な力な為、誰もが秘匿としようとする世界の神秘…」
ハイネは淡々と無表情で語り、ルーカスの右腕を指す。
「紅痕は、四つの痕の中でも特に扱いが困難なものです。ツヴァイさん、貴方が無意味な決闘を繰り返す理由は、紅痕の魔力に呑まれそうで、操れる力が欲しいから…違いますか?」
そこまで言うとハイネは再び白桜を召喚し、白の光を纏わせる。
「……確かに、俺は紅痕に呑まれかけている。実力が欲しいのも事実だ。
…だが、お前がそれを知ったところで何になる!お前は俺よりも上に立つ人間だと!そう言うのか!!痕を知っている"だけ"の人間が!!」
ルーカスは最初こそ肯定し、呟くような小さな声で話していたが、徐々に声は大きく怒りを含んだものに変化していき、最後は怒鳴っていた。
「はい。私は貴方より強い」
対してハイネは冷静、というより冷淡な表情でルーカスの問いを肯定する。
「知っている"だけ"…そう。知らないからこそ、貴方程の男が魔力に呑まれるのをただ見ていることはできない。
生憎、そういう性分でしてね」
…ーー刹那、白桜が一際強い光を放つ…。
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