第7章『実力と疑惑』

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「…オォォォォ!!」 ルーカスは白桜の光を見た瞬間、紅い光に包まれ、雄叫びともとれる絶叫をあげる。 「…来ますか…」 ハイネが呟きと共に白桜を斜めに構えた時、ルーカスを包む紅い光が消え、ルーカスと、『ルーカスのカタチをした紅い塊』が現れた。 「これは…」 ルーカスが頭を抑えながら立ち上がり、隣を見ると、頭から爪先まで、全てが紅で、顔に当たる部分には妖しい魔術陣のようなものが浮かび上がっており、その中心で黒い瞳がギョロギョロと蠢いている。 「…何をした!?アーデンベルク!!」 ルーカスは紅い塊から飛び退いて距離をとり、ハイネを睨む。 「アレは、貴方の内に眠る紅疸(ディル・スティグマ)そのもの。アレを倒せば貴方は(スティグマ)から解放されます」 ハイネはそれだけ言うと光弾を紅い(ディル・スティグマ)に向けて放ち、後ろに下がる。 「……グ…」 《ディル・スティグマ》は小さなうめき声を上げると、光弾を片手で弾き、辺りを見回す。 「オレハ…ソウカ…キサマガ"ルーカス"カ…」 《ディル・スティグマ》は視界の端にルーカスを捉えると、蠢く黒の瞳を細め、紅い腕を振り翳す。 「…マサカ…ブンリ…サセラレルトハ…ーー」 一瞬俯き、顔を上げる 「思わなかったぞ!」 その顔には一本の横向きの罅(ヒビ)が入っており、口のように開く。その口調はほどとは比べものにならないほどはっきりとしており、翳した手は液体のように流動し、剣を象る。 「ぐっ…バケモノが…!」 完全に片腕が剣に成った瞬間斬りかかってきた《ディル・スティグマ》の腕を受け止めながらルーカスは悪態をつき、《ディル・スティグマ》を弾く。
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