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「星の理に縛られよ…『グラヴィティ』」
ハイネは腕を闘技場の石畳に突き刺して吹き飛ぶ勢いを中和した《ディル・スティグマ》に向けて極めて小さな声で重力属性の魔術を放ち、動きを制限する。
「さて、ここからは貴方の闘いです」
そう言うとハイネは白桜を消し、ルーカスの肩を叩く。
「アレは貴方の力です。真に力を制御したいなら、屈伏させることです」
「…そうか」
ルーカスはハイネの言葉に小さく返事を返すと立ち上がり、紅い剣を構える。
その心中では驕っていた自身への怒りと、ハイネが何らかの魔術(重力属性とは気づいていない)を維持していないと《ディル・スティグマ》に傷一つつけられなかったかもしれないことに対する悔しさが溢れ、闘志のような魔力の奔流となって体から滲み出ていた。
「いくぞ…その名に恥じない闘いを…二番目の王の名【ツヴァイ】の名において、真の姿を見せよ!!
《宝剣バルク》!!」
ルーカスが持つ紅い剣、バルクが光を放ち、その姿を変化させる。
魔力と特殊な詠唱による形態変化ーーそれがまだ未熟なルーカスの魔武器バルクの持つ能力の一つであった。
紅を基調とした幅広の刃に、黄金色の柄。柄の底には蒼の宝玉が嵌め込まれ、荘厳な雰囲気を醸し出している。
「グ…体ハ貰うゾ…!!」
《ディル・スティグマ》は頭を抑えながらゆっくりと立ち上がり、ルーカスを睨みつける。
「力は貰う…!!」
対するルーカスもバルクを斜に構え、《ディル・スティグマ》を睨みつける。
ーー一瞬の静寂の後、両者はほぼ同じタイミングで地を蹴り、お互いの存在を賭けた闘いを開始した。
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