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「ハァ…ハァ…づッ…!!」
ルーカス=ベセラ=ツヴァイは妙に冷静だった。体中を走る裂傷による激痛すらどこか遠くにいってしまったように何も感じていない。
思えば今日は予想外の事がよく起こる。
初めて会話をしたにも関わらず、脳裏を掠めたのはどこか心地よい懐かしさ。
自分でもよくわからない感情に戸惑った。
そしていざ闘ってみれば、自分がいかに脆弱であったか、矮小であったかを思い知らされた挙げ句、独りで支配すると決めた力すら助けがあって心の片隅で安堵していた自分…
ん、とルーカスは疑問に思う。
何か心に引っかかる。
そうか、とルーカスは自己完結させる。
ーー俺は…怒りを感じているのかーー
そう呟きながら、《ディル・スティグマ》の一撃を横に転がってかわす。
「…の力…我が……」
『詠唱なドさせン!!』
ルーカスが立ち上がると同時に《ディル・スティグマ》は紅の魔弾をルーカスの脚を狙って数発放ち、ルーカスを転倒させる。
「ーー…我に示せ」
ルーカスはゆっくりと立ち上がり、最後の言霊を紡ぐ。
「…バルク!!『纏災形態』ッ!!」
ルーカスの持つバルクが眩い光を放ち、その姿を変える。
幅広の刃は柄だけを残して消え去り、代わりに紅い雷がバチバチと音を立てながらルーカスの周囲に浮かんでいる。
「…あぁ…今解った」
顔を上げたルーカスの瞳は紅に輝き、顔は言いようのない怒りに歪んでいる。
「俺は…弱い。
過信とは…よく言ったものだな」
紅い飛沫が散る…。
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