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「なぁハイネ、ホントに大丈夫なのか…?」
ハイネの張った結界の中、フィンが心配そうに尋ねる。
「大丈夫…と私は信じています。
何と言っても彼は強いですから」
ハイネは魔術を維持するために結界と《ディル・スティグマ》にかけた重力に魔力を送りながらフィンに答え、傍らでフィンと同じく心配そうな表情をしている4人に視線を向ける。
「因みに、助けには入りませんし、助けにはいかせません」
ハイネの言葉にうっ、と出しかけた言葉を飲み込み、4人はルーカスに視線を戻すが、ニルだけは何かを言いたそうにハイネを見る。
「何か?」
「…おかしい…よ…?」
ニルは小さく呟くようにハイネに言うが、ハイネはニルが何を言いたいか分からず、首を傾げる。
「…いくら…ハイネくんが魔術…得意でも…二つも同時に…止まってないで維持できるのは…おかしいよ…?」
不思議そうに呟くニルにハイネは驚く。
実際には魔術を維持しながら動くことは可能ではあるが、今は重力魔術を少しずつ弱め、つい先ほど消した所であった。
「…驚いた…。まさかこんな距離から違和感とはいえ気づくとは…」
ハイネはどこか嬉しそうに言い、何故か結界を解除してしまう。
「さぁ…ここからが本番ですね」
結界が消えた瞬間、別世界のように場の空気が変わり、ハイネを除く5人は息を呑む。
「説明は、後ですね」
ハイネの視線の先には、血潮に濡れ、床に伏すルーカスの姿があった。
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