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「何故聖痕を知っていた?」
「起きて直ぐにその質問がくるとは予想していませんでしたよ」
学園の医務室。
リューディアによって体の傷は全て消えたものの、魔力が枯渇しかけていることに変わりはなかったルーカスは此処へ運ばれていた。
そして目を覚ました第一声が先ほどのものだ。
「何故知っていたか…。それは簡単です」
ハイネは苦笑しながら言葉を紡ぐ。
「私の知り合いに聖痕を持つ人間がいるからです」
「それは……ッ…!?」
淡々と告げるハイネにルーカスは何かを言おうとするが、急な睡魔に襲われ、頭を押さえる。
「お前…なにを…」
「今は眠っていなさい…。
いずれ知ることになりますから…」
ルーカスに聞き取れたのはそこまでで、疲れと魔力不足が眠気を促進したようで、意識をゆっくりと手放した。
「そう、いずれ知ることになる。
俺という存在の起源、正体を」
ルーカスが眠りにつき、静寂が訪れた医務室にハイネの声が小さく響いた。
ーーーーー
「…アランさん」
「…覚醒したのか?」
医務室を出て直ぐの廊下に、アランが壁を背にして立っており、ハイネがアランの前で立ち止まると口を開く。
その口調に何時もの無気力さは微塵も存在しない。
「はい。
…やはり宿命なんでしょうね。《ディル・スティグマ》はツヴァイに受け継がれた…
ならば残りはアインス…ドライ…そして…フィア…」
「違うな、ドライとフィアだけだ」
何処か予言めいた口調で語るハイネの言葉をアランが否定する。
「ではアインスは…」
「ああ。少し前に覚醒した」
アランの言葉に一瞬目を見開くが、ハイネは目を閉じ、呟く。
「…王たる存在に受け継がれる【聖痕】…
世界各地に散らばる【神器】…
やはり負の連鎖は止まらない…。
歴史の流れは残酷だと思い知らされましたよ…」
ーー…悲哀の感情を含んだハイネの言葉を理解できるのはもう少し後のお話…ーー
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