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「すまなかった」
ルーカスのそんな一言が教室を騒がしくする。
「お前には色々と不躾な言葉を言ってしまった。
本当にすまなかった」
「顔を上げて下さい。私は気にしていませんし、王族が簡単に頭を下げるべきではありませんよ」
ハイネは深々と下げているルーカスの頭を無理矢理上げさせ、優しく言う。
それを見た周りの生徒達は時計をチラッと見、教室を出て行った。
「だが…」
「ですから謝罪はいりません。
どうしても、というなら、手に入れた力を私利私欲の為に使わない、と誓って下さい。それが謝罪よりも価値があるものです」
「…分かった、誓おう。この力、必ずこの国の為に使うと」
ハイネの言葉に瞳に強い意識を宿したルーカスははっきりとした口調で答え、颯爽と去っていった。
「なんか雰囲気変わってねぇか?」
去っていくルーカスを見ながらそう呟いたのはフィンで、ハイネはその言葉に苦笑を零す。
「何かに気づいたんですよ」
「何かって…何だよ?」
「何かです」
怪訝な顔をするフィンに更に笑みを深くしたハイネはそんな答えを返し、席を立つ。
「…?どこ行くんだ?もう授業始まるぞ?」
「…フィン、次の授業は何ですか?」
「ん?そりゃ魔と…う…あぁ!?」
「魔闘技の授業でしたね…」
「どうりでアイツらいねぇわけだ…」
ラルフ達は先にさっさと行ってしまったようで、フィンは焦りだしたが、ハイネは余裕な表情で窓枠に足をかけ、
「ああ、グランドはこの下ですので大丈夫ですよ」
そんな言葉を残して"4階"から飛び降りていった。
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