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「…そうなんだ…」
正確には昨日、今日の2日間だけど、とリエナは付け足し、ふてくされたような顔をする。
「な~にが悲しくてこんなイヤミなお坊ちゃまと一緒にいなくちゃならないんだか」
「はっ、それは僕のセリフだね!高貴な僕がどうして君のような平民と行動を共にしなければならないのかな!」
パチパチ、と火花が散るように二人は睨み合い、今にも戦闘が始まりそうな雰囲気だ。
「アルくん…もしかして…昨日…走ってたのは…」
と、ここでほぼ空気と化してしまっていたニルが口を開き、アルはやれやれと肩を竦める。
「ラルフと僕があの二人の喧嘩に首を突っ込んだからだよ」
「あぁ!今日という今日は許さない!!張っ倒してやる!!」
「君程度には無理だね!!力の差を見せてあげよう!!」
いがみ合っていた二人が互いに魔武器を取り出し、構えたのを見たアルはニルを促し、触らぬ神に祟り無し、と呟いて魔術の練習の為に二人から離れていった。
ーーー一方、ミーシャに剣術を教えているハイネは…
「はっ!!」
「肩に力が入りすぎています」
ガギン、と横凪ぎに振るわれた守光雷剣を切っ先を地に向けた白桜で受け止め、手首を返してミーシャの手から弾き飛ばす。
「ミーシャさん、確かに以前重さが足りないとは言いましたが、力任せに振るえばいい、という訳ではありませんよ」
「くそ…また負けた…」
「…聞いていますか?」
どんよりした空気を纏ったミーシャはハイネの言葉が耳に入っていないようだ。
「これでもう二桁は負けた…」
「…ミーシャさん?」
とりあえず目の前で手を振ってみるも、無反応。
「やれやれ、前途多難ですね」
肩を竦めるハイネだが、微笑みは崩さない。
ーー結局授業終了の鐘が鳴るまでミーシャの剣がハイネを捉えることはなく、リエナとセインスの勝負も決着がつかなかったのだったーー
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