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ハイネ達が宿を出る少し前、峡谷の奥。
「…う…」
『ロイ!!』
ロイが目を覚ますと、目の前では自身の使い魔であり、パートナーである氷精霊の長が氷剣を手に仮面の男と戦っている。
「俺は…」
違和感を感じ腹部に手を当てるが、傷は無い。魔力も消費しておらず、横には魔武器ジークフリートが転がっていた。
『ロイ、お前は幻を見ていたのだ…。
あの男…強いぞ』
ロイがジークフリートを持ち上げた時、弾き飛ばされた氷月ーー体の至る所に裂傷がはしり、蒼の着物のような服はボロボロになっているーーがロイの隣に着地し、冷や汗を流しながら呟く。
「…制限能力解放を許可する。奴を氷像にしてやるぞ」
『承知した』
ロイが魔力を高めると同時に氷月は自らの心臓部に氷剣を突き刺し、氷像となってしまう。
「ッおいおい!俺を氷像にするんじゃなかったのかァ?」
男の馬鹿にするような声を無視し、ロイはジークフリートを振るう。
ジークフリートには氷が付与されており、振るわれた軌跡にはキラキラと氷の粒子が光を反射しながら舞っている。
『能力解放…『氷華闘剣』』
氷月の冷ややかな声を耳の端に捉えたロイは瞬時に男を弾いて距離をとり、魔力を氷月に送る。
パキン!と氷が割れるような音と共に峡谷の一部ーーロイたちが戦闘している場所から半径30メートル程ーーが氷原と化し、地から氷剣が突き出して仮面の男に襲いかかる。
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