第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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「燃え盛る紅き業火は犇めく憎悪にその姿を黒き獄炎へと変え、我が仇敵を焼き払う!『黒炎惨火』!!」 ルーカスの火球魔術によって火柱が噴きあがっている場所へ更にルーカスの上級魔術が襲いかかる。 ルーカスの両腕から放たれた火炎は黒く染まっており、先ほどとは比べ物にならない威力を以って相手を焼き尽くす。 「やった…?」 「いや…まだまだだ」 男を縛っていた魔紐【ニール】から、抵抗されている感触が無くなったと感じたレーナがぼそりと呟くが、ルーカスは魔武器【バルムンク】を降ろさず、更にはいつでも魔術、または法術が放てるようにと、魔力を溜めている。 「ハイネ、一体なにが…」 「説明は後です。 武器を構えてください」 ラルフの言葉を遮ったハイネの言葉と同時に地を焦がしていた黒炎がはじけ飛び、中から未だニールに縛られてはいるが、無傷の男が姿を現した。 「…く」 ピクリ、と男の肩が揺れ、徐々に揺れは激しくなっていく。 「くははははははハははははははははははははははハハはははははハハははははハハは!!!」 紫の魔力が吹き荒れ、地が捲れあがる。 狂ったように嗤う男の手には渦を巻くように荒れ狂う魔力と同じ色の紫の蛇が巻きついている。 「…なんだ…あれは…?」 困惑の声が示すのは未知の色の魔力か、それとも男が手にしている紫紺の宝石か。 それを知るのは声を発したミーシャだけだが、ハイネを除く全員が共通して覚えた感情があった。 「身体が…震える…!?」 .
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