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、それは恐怖。
ヒトがヒトであるために必要な感情の一つだ。
言葉を捻り出したアルを含み、本能的にハイネ以外の全員が狂ったように嗤い続ける男に恐怖を、荒れ狂う紫紺の魔力に恐れを抱いた。
「…不味いですね」
ハイネが呟くと同時、男を縛っていたニールがバラバラに引き千切られ、男が地に足をつける。
「…ちィとばかし本気出すかァ…なぁ?【ヴェノン】」
『イノチ…喰ラウ!』
両腕をダランと垂らし、俯きながらの男の言葉に腕に巻きついた蛇が甲高い、耳障りな声で応える。
「……『タナトス』」
『アアアアアアァァァァアアァアアアアアァァアァァアアア!!!!!!!』
「ッ!?不味い…!光の加護よ!『シャインリフレクト』!!」
男の雰囲気に呑まれ、指一本動かせなくなっているラルフ達に、凶刃が襲いかかった。
男の言葉とともに弾けた紫の蛇の身体が無数の刃と成って襲いかかったのだ。
だが、その刃がラルフ達に届くことはなく、ラルフ達を庇うように立ちふさがったハイネの魔法にはじかれる。
「ぐっ…」
左腕を抑える。
間一髪、簡易詠唱で障壁の法術を唱えたハイネだったが、防ぎきれなかったのか、左腕全体がズタズタになっている。
「まさか防いじまうとはなァ…」
『驚愕!驚愕!』
嘲るように言った男の腕には弾け飛んだはずの蛇、ヴェノンがいつの間にか巻きつき、狂ったように叫んでいる。
「ハ…ハイネ…」
自分たちを庇い、左腕に重傷を負ったハイネの背後からフィンの心配したような震えた声がした。
ハイネは大丈夫と言わんばかりに微笑みかけ、それにフィンが一瞬安堵の表情を浮かべたが、男から絶望の一言が発せられた。
「もう一発、イっとくかァ…!?」
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