第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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『ロイ、まだか?』 ハイネが左腕に傷を追った頃、『氷剣舞踏(織剣)』によってロイと自らを守っていた氷月は静かに声を発する。 見れば、『織剣』の氷剣で創られた壁に皹が入り始めていた。このままでは直ぐに破られることは間違いないだろう。 「ーー準備、完了…だ」 ロイが息を荒くしながら呟くと同時、氷剣の壁が遂に破られ、ファウストがその身を炎と化しながらなだれ込んでくる。 「『瞬風…ーー」 ジークフリートが淡い緑の光を放ち、ロイの姿が消える。 ファウストの頭上へ高速で移動したロイがジークフリートを上段に構えると同時、ジークフリートの刀身が氷に包まれる。更に風が渦を巻くようにジークフリートに絡みつき、蒼と緑の光を交互に放つ。 「ーー…氷葬牙』ッ!!」 まさに刹那というに相応しい時間でジークフリートから氷の虎と風の龍が生み出され、二体のファウストを凍らせ、噛み砕き、切り刻む。 そして地に降り立ったロイはジークフリートを横薙ぎに一閃。ファウスト一体を両断した。 「『風氷(連牙)』!」 更に飛びかかってきたファウストを風を纏わせたジークフリートで一閃、その後ろを追うように放たれていた炎の奔流を凍らせ、風により砕く。 武器への属性付与を実に0.01秒以下で 繰り返すことによる変則戦闘。それが『瞬風氷葬牙』の正体だ。 通常、魔力を属性に変換し武器に付与させる上で、異なる属性を組み合わせることは不可能だが、ロイは類い希なる魔力運用によって限りなく同時に近いタイミングで属性付与を繰り返し、付与する魔力を変換するタイムロスを無くしている。 これだけ聞けば欠点など無いように聞こえるが、致命的な欠点が二つ、ある。 「…あと、10秒ーーッ!!」 .
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