第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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吐き出された血が地面を紅く染め、ロイは未だ苦しげに唸っているファウストに視線を向け、震える腕を上げる。 「…風よ…我が刃と成れ『ウィンドエッジ』」 『瞬風氷葬牙』の副作用により魔力が乱れているためか、創り出されたのは本来なら数本生成されるはずの一本の風の剣。 「いけ……!!」 ロイが軽く腕を振るい、風剣を飛ばす。 ヒュン、と風を切りながら進む風剣は、先程ジークフリートで傷つけた場所に直撃するも、ファウストの注意をロイに向けるだけという最悪の結果となった。 「ここまでか……ッ」 ファウストが痛みに唸りながらもロイの下に辿り着き、血のように紅い爪を振り上げる。 「くっ……」 ロイは諦め、目を閉じる。瞬間、生暖かいものが顔にかかる。 ーー死とはこんなにも苦しいのか……? ファウストの強靭な爪に斬り裂かれた筈だが、痛みは先程から感じている技の反動のみだ。 不信に思ったロイは瞼を持ち上げてみるーー開いた。そして最初に見た景色は。 『まったく、仕留めきれないとは…情けないマスターだ』 皮肉気な言葉と裏腹に、傷だらけのまま尚、自らの主人の敵を倒した使い(パートナー)の姿だった。 「……俺は戻れと言った筈だぞ」 『強がるな。まったく、詰めが甘いのは昔からだな。お前は。学生時代から変わっていない』 ロイの子供のような言いぐさに氷月は腰に手を当て、溜め息をつく。 「……面目ない」 .
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