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『さて、今度こそ戻るとしよう。無茶はするなよ』
「余計な御世話だ。さっさと戻れ」
お互いに笑いながら言葉を交わし、ロイはジークフリートを杖代わりにゆっくりと立ち上がる。
『……行くのか?』
「当たり前だ。学生にまかせっきりとはギルドマスターの名折れだ」
少しずつ安定してきた魔力で身体の調子が良くなったのか、しっかりとした足取りでロイが歩きだすと同時、氷月はではな、と声をかけ、姿を消した。
「……無事でいてくれ」
少し離れた場所で紫紺の魔力が吹き荒れるのを見ながら、ロイが呟く。直ぐに駆けつけなかったのは未だ魔力が安定しきっていないからで、ハイネに言いようのない信頼のような感情を抱いていたからだ。
「…アーデンベルク……か」
その呟きは誰に向けられたのもか。一瞬口元を緩ませたロイだったが、直ぐに顔を引き締めると、ジークフリートを消し、走り出した。
*
「…みなさん、そこから動かないでください。必ず、守ります」
暴風のような紫紺の魔力が吹き荒れる中、右腕だけで白桜を握りしめながら言い、リューディアを呼び出す。
「……リュー、みなさんを頼みました」
『りょーかい!『聖女の炎』……『守護枝陣』』
リューディアは召喚されると直ぐにハイネの意思を読み取り、返事と同時に法術を展開する。
一つは、ユグノー森林で重症のラルフ達を直した白い炎を傷だらけのハイネの左腕に。
一つは、木の枝のように入り組んだ光の糸をラルフ達の前方に。
「……心の準備はできたみたいだなァ…次も、防ぎきれるかァ!?『タナトス・エッジ』!!」
『ギ…ガァアァアアァアァァアアァ!!』
紫紺の蛇が弾ける。だが、先ほどは無差別に凶刃を振るったのに対し、今度は三日月型の刃となってハイネを引き裂こうと迫る。
その数は30。込められた魔力も先ほどとは比べ物にならあい。
ーーそんな凶刃を前にして尚、ハイネはワラった。
「……【魔力制御第80位封印】、解除」
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