第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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吹き荒れる紫紺の魔力の中、小さく、言葉を紡ぐ。 瞬間、ハイネの躯から先ほどの数倍の魔力が放出され、大地を揺るがす。 「…『シャインリフレクト』」 詠唱破棄。 再び発動した光の盾は今度は皹すら入らずに紫紺の凶刃を防ぎきり、それどころか、幾つかの刃を弾き返した。 「…ちっ!」 跳ね返され、自身に牙を向くそれを虚空より取り出した一本の槍で弾いた男は弾けた紫蛇【ヴェノン】の体が元に戻るよりも早く、ハイネに肉迫する。 「…ラァ!」 ハイネの持つ白桜の刃が届かない絶妙の位置で槍を突き出した男はハイネが槍を弾いたのを見ると直ぐに飛び退く。 「…『タナトス・サイス』」 そしていつの間にか腕に再び巻きついていたヴェノンを数メートルに及ぶ柄に巨大な刃を備えた大鎌に変え、投擲する。 「『ティル・ガイム』!」 凄まじい速度で迫る『タナトス・サイス』を、光の大剣を生成、白桜と合わせて振るい、それを弾く。 更に大剣を光に還元したハイネはそれを白桜に纏わせ、地を蹴る。 「…ッ…!!」 僅か数歩で男との距離を縮めたハイネは短く息を吐きながら白桜を男の肩口に斜めに振り下ろす。 ーーーガギン!という音が響くのと、男がニヤリと口角をあげるのは同時だった。 目を見開いたハイネはすぐさま白桜をもっていない手に闇を纏わせ、霧にして放つ。魔術名は『ノワールミスト』黒の霧を模したそれは下級魔術に分類されるが、相手の視界を奪うには適した魔術だ。 .
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