第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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「さて、どうしたものか…」 集落の宿に戻ったロイが初めに零したのはそんな一言だった。 討伐予定だった魔物は正体不明の敵に倒され、今回の目的であった高ランクの任務を見せるということが出来なかった。 迷うのも当然だろう。 だが、それもある事によって杞憂に終わってしまう。 ーー何もしないよりはいい、とロイが戦闘の指導を行おうと立ち上がった時、"窓"を叩く音が部屋に響く。 「どうしました?ヤンさん」 窓の外には身長八メートルを優に越える岩人族の大男が立っていた。 彼の名はヤン、岩人族の長であり、遺伝子の突然変異によって通常の岩人族より遥かに巨大になった内の一人だ。 ~内の一人、というからには当然彼以外にも巨大になった岩人族はいるが、後述、ということにしよう。 「大変だ!集落の外に魔獣が大量に現れた!」 ロイの問いに焦燥しきった様子で返した彼の顔は不安という言葉を表すように陰がさしており、八メートルを越える巨体が少し小さく見える程だ。 「直ぐに行きますから御安心を!」 言うが早いかロイは氷月を呼び出し、共に飛び出していった。 「………何か引っかかりますね…」 ロイが去った後、各自自分が行っても邪魔にしかならないことを痛感している中、ハイネがポツリと零す。 「何がだ?」 それを耳の端に捉えたのはミーシャで、何か思案しているハイネに尋ねる。 「…………」 対してハイネは無言。ミーシャが見えていないかのように何かを考えている。 .
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