第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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人間の体が宙を舞う。 言葉にすれば簡単のように思えるが、人間を横にではなく縦ーーこの場合は斜めだがーーに飛ばすのにはかなりの力が必要になってくる。 その上、ロイは決して軽くはない大剣(ジークフリート)を持っている。 その体が宙を舞う、ということは必然的にロイの体はかなりの衝撃に襲われていた。 痛みから察するに胸…胸骨の辺りに何らかの攻撃をくらった。 そう、何らかの。 ロイは今の状況に、薄れゆく意識の中かなり混乱していた。 だが、ロイが意識を失うより早く体が地に叩きつけられ、強制的に意識が引き戻される。 「…づ…ぁ゛…!」 掠れた声が口から漏れ、痛みが意識を失わせてはくれない。 ジークフリートは自らの後方数メートルの地点に突き刺さっており、胸骨は良くて罅、最悪折れているだろう。 それだけの衝撃をロイは受けたのだ。 (何故だ…身体の強化は解いていない筈…だが…生身に直撃した…) ロイは目の前に佇む男から目を離さずにゆっくりと、氷魔術で作り出した剣を杖代わりに立ち上がり、自らの胸部に触れる。 折れてはいない。だがジークフリートを振るえるのは一度だろう。 一度振るえば遠心力その他重圧がかかって良くて折れ、悪ければ折れた骨が心臓に突き刺さることもある。 そしてそれ以前に、目の前の男がジークフリートを拾わせてくれるとは到底思えない。 「絶望的、か」 零れた声は妙に冷静で、奇妙だな、とロイは心中で苦笑したのだった。 .
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