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「…拾え」
目の前の男から初めてーーロイが聞き取れたーー言葉が発せられ、ロイはほぼ無意識にジークフリートのある場所まで歩き、拾い、構える。
「ジークフリート
『氷の終焉<エンドオブアイス>』」
ジークフリートに氷が張り付き、その刀身を長く、長く伸ばしていく。
「…ぉ…オオォォオォ!!!」
叫ぶ。
ありったけの魔力を込める。
そしてジークフリートを握り締めたとき、ロイに変化の時が訪れる。
「…ッ!?」
ジークフリートが、その姿を変えていく。
幅広の刀身は更に広がり、その中央には紋様のような文字が彫られている。
ジークフリートが姿を変えた事によって刀身に張り付いていた氷が剥がれるかと思うが、ロイの予想に反して氷は冷たく、鋭く研ぎ澄まされていく。
既に氷の刃の長さは10メートルを超えており、神々しい光を放っている。
そして巨大な氷剣と化したジークフリートが振り降ろされる瞬間、男が再び呟く。
「『ーーー』」
フッ、と。
擬音をつければそんな音が鳴るかのように無音で、氷剣は消滅し、男の姿が掻き消える。
「黒魔法ーー」
ロイが死を覚悟し、目を閉じた後、聞こえたのは自らが、いや、ギルド所属者全員が尊敬の念を持つ者の声。
「ーー『ブラックブレイク』」
黒の閃光が、ロイの前方を穿ったーー
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