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「何故だ…」
銀髪の男、レイフは茫然自失といった表情でそう零す。
片手には光を失った《クラウ・ソラス》が握られている。
「不敗…では…ッ!?」
レイフは目の前の光景が理解できなかった。いや、理解したくなかっただけだ。
不敗と讃えられた剣から放たれた金光は確かに全てを消し去るが如き力をもっていた。
だが目の前では金光は漆黒の光に呑まれ、光を放った《ダグザ》はその姿を黒の孔<アナ>と変え、それを操る《黒白の調停者》ハイネ=アーデンベルクは涼しげな顔でレイフを見つめていた。
「神器は、その余りの威力故自らが認めた者以外に力を引き出されないように自らの力に"鍵"をかけています…」
ハイネが右手を空気を払うように振るうと、黒の孔はひび割れるように消え、淡く黒光を纏った《ダグザ》が姿を現した。
「そしてどれだけの魔力を持とうとも、その力を真に覚醒できるのは数秒です。
更に再び魔力を注がなければ、そこらに転がっている石ころより無価値な飾りとなってしまう」
「バカな…ーー!!」
レイフは口に出した瞬間、自分が決定的な隙を見せつけていた事を思い出し、『クラウ・ソラス』を鞘に収め、魔力を流す。
「…ロイさん、ジークフリートを見せてもらえますか?」
ハイネはレイフを見ることなくロイの方に向き直り、そう頼む。
「り、了解」
ロイはいきなりのハイネの要求に、少し戸惑いながらもジークフリートをハイネの目の前に突き刺す。
「やはり…ーー」
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