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「がっはははは!スマンなハイネ!ちと同様しておったわ!」
ベルグゾン峡谷、岩人族の集落よりやや離れた場所に彼、エートゥ=エンホの住処は在った。
彼も岩人族の一人ではあるものの、特殊な魔石を食べて育った彼の体長は優に10メートルを超え、他の岩人族に迷惑がかかるということで少し離れた場所に崖を刳り抜いた穴倉に住んでいる。
「いえ、いずれは彼も知ることですから。今回は襲撃を止められなかった私にも責任はありますから、これで手打ちとしましょう」
エートゥの豪快な笑い声にハイネはさりげなく遮音ーーある程度の声量に聞こえるようにーーの結界を薄く張り、対談を続ける。
「…さて、ハイネ!昔話と洒落込みたいとは思うが、時間はあまりないだろう?」
「はい。一応今は学生、ということになっていますから」
ハイネは傍らで静かに目を閉じているロイに視線を向けると、ロイと自分の真下に転移の魔法陣を展開する。
「また来ます」
「おう!まっとるぞ!」
エートゥの豪快な声を聞きながらハイネは転移、と呟き、ロイと共に姿を消した。
「…やはり″黒白″は確実に強くなっている…か。
ハイネ、あまり無理はするなよ」
先ほどとは一転した心配そうなエートゥの声は広い穴倉に淋しく響いていた。
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