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「…何の目的で?」
「SSランクとXランクの実力があまりにも離れすぎているからです。
もっとも、SSランク以上Xランク未満の方々は数多くいます。逆に、ギリギリSSランクの方も。
やがて来るであろう混乱を抑えられるのは未来の方々です。私たちの時間は無限ではありませんから。
…本題から逸れましたね…、教えていただけますか?」
夜空を見上げながら話すハイネには神々しさすら感じられる、とロイは心中で感嘆する。
まだ成人すらしていないこの少年は一体どれだけの修練を積んであの場に立っているのか、と。
「勿論だ。
…金髪男女の二人組がデニス=ファングとアリサ=ヒーラ、黒髪長身の男がナヤトラ=タケミツ。全員SSランクだ。」
「デニス=ファング、アリサ=ヒーラ、ナヤトラ=タケミツですね…覚えておきます
…さて、二つ目の質問です」
それまでの柔らかな雰囲気を纏う学生としてのハイネではなく、《黒白》としてのハイネがあった。
ロイがその雰囲気の変化に戸惑う間もなく、ハイネの紅の瞳がロイを捉えた。
「貴方は、この世界の醜さを知る覚悟がありますか?」
ハイネの口から紡がれた言葉はロイの予想を裏切り、重く、暗いものだった。
「…醜さ?」
「はい、この世界には善意と悪意、純潔と醜悪、光と闇、白と黒のように、表と裏があります。それらが均衡を保つことによってこの世界は成り立っています」
つまり、とハイネは一旦言葉を区切り、虚空から純白のローブを取り出す。
「ランクXを目指す、ということはいずれ世界の、少なくともこの国の、闇を知ることになるということです」
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