第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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「…闇、か」 「…これに関してはランクアップ試験までに考えていただければよいので、これで私からの質問は終わりです。 聞きたいことは、私が答えられる範囲であれば全て答えましょう」 考え込むロイにそんな言葉を投げかけたハイネはローブを羽織るとフードを深く被る。 「…なら幾つか質問を。 君がエルヴェの息子兼弟子であることは虚偽ではないのだな?」 「勿論です。補足しますと、養子、という形になりますが」 「なら次だ。 君の…貴方の二つ名である《黒白》、これはどういう意味なんだ?」 ロイの質問にハイネは貴方はどう解釈をしていますか、と逆に質問を返す。 「…オレの解釈では、黒白は全ての魔術、法術の最期の到達地点でないかと」 「…何故?」 「…黒白として魔術、または法術を放つとき、君は黒、白『魔法』という。それに、これは先ほど気付いたことなんだが、放たれるものからはどの魔術、法術とも違う魔力を感じたし、俺の傷を一瞬で治してしまうものまであった。現存する魔術、法術ではあそこまで効果の高いモノはなかったはずだ、と、判断材料としては少し少ないかもしれないが、そう考えたんだ」 ロイの考察にハイネは柔らかに微笑み、概ね正解です、と答える。 「《黒白》とは、即ち原初の力。現在の全ての魔法の原点であり、終着点。 根源は『無』。原初は『黒』と『白』なのです」 ーー遥か昔、まだこの世界の天と地が乖離するエヌマ・エリシュが起こる更に前、この世界には色という概念が存在しなかった。 元々色という概念は言葉ができた後に後付けされたものだから存在しないのだが…、その時世界は黒と白で塗りつぶされた宇宙と同じモノだった。 そしてやがて天と地が乖離し、世界にヒトが生まれ、更に時が経ち、魔法が生まれた。その世界最古の魔法こそが宇宙を模して名付けられた『黒白』魔法。この世総ての神秘の原点にして神が扱うべき力。 「ではなぜ《黒白》魔法が知られていないかという事についてなんですが、今は割愛させていただきます それと質問の答えとすると、私の二つ名にある《黒白》は先ほど述べた通り魔法の原点であり、終着点であると同時に、調停者、という存在を証明するものでもあります」 .
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