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「……ふぅ」
たった数分の、短い唄を歌い終えたニルは小さくため息をつき、池におぼろげに映る自分の眼を見つめる。その瞳は虚ろで、今にも眼を抉ろうとしているようにも映る。
「良い唄ですね」
「ひゃぁ…!!…ハ…ハイネ…君…!?」
そんなニルの背後で、何時の間にか明かりの吊るされている木の棒に寄りかかっていたハイネが言葉を発し、ニルはいきなりの事に眼を白黒させている。
「…すみません、驚かせるつもりではなかったのですが…」
「う…うぅん…でも、なんでハイネ君はここに?」
軽く頭を下げたハイネに対し、ニルは両手を顔の前でわたわたと振ったあと、首を傾げながら返答する。
「いつぞやの約束を果たしに来ました」
「約束?…あ、も、もしかして…」
ハイネの言葉に首を傾げたままのニルだったが、思い出したかのように制服のポケットから一枚の紙を取り出す。
それは、ハイネが入学式の時、ニルに渡していた紙だ。
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