3362人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。貴女の魔眼を封印する約束です」
「覚えて、くれてたんだ…最近はいろいろと忙しかったから……」
忘れてたよ、とニルは儚げに笑う。そこには、約束を守ってくれた、という喜びの念と少しの迷いか見て取れた。
「ニルさん、私は、貴女が何を抱えているかは知りませんし、詮索するつもりもありません」
ですから、とハイネは続ける。
「貴女が望むのならその魔眼の能力を消し去ることもできる。過去を棄てるか、過去を受け入れるか…、それは、貴女の自由なのですから」
ハイネの言葉に、ニルの瞳は揺れ、そこには涙すら浮かんでいる。
暫しの沈黙の後、今にも泣き出しそうな顔と口調のまま、ニルは言葉を紡ぐ。
「ハイネ君は、死神って…どう思う…?」
「死神…ですか…。そうですね…、死した魂を冥界へと連れて行く、というのは一般的な見解でしょう。
ですが、貴女の瞳に宿るモノは違う。そうでしょう?」
「ハイネ君…ハイネ君は、もしかして……」
私の魔眼を知っているの、とニルは問う。ハイネの全てを見透かしているような口調に、そう感じたからだ。
「はい」
とハイネは数瞬の迷いもなく、即答した。
「ニルさんについては知りませんから、確信ではないのですが、似たモノは知っています」
.
最初のコメントを投稿しよう!