第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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ティルの精一杯の制止も虚しく、ゲイツはその手に魔力を集め、詠唱を紡ぐ。 「死の世界にて、その身を神と成した者よ。我が声に応え、その力をこの者に与えよ 『デッドリンク』」 --それは世界では禁忌とされる魔術。 決して交わってはいけない二つの世界を繋げ、死者の世界、冥界に棲む神の一柱、死神から力を引き出す力。 死神の力、といえど本当に神の力を引き出す訳ではない。本当に神の力などヒトに入れようものなら、数瞬と保たずにヒトの身体は弾け飛んでしまうだろう。 あくまで仮。だが限りなく神に近い力を今ゲイツはニルに注ごうとしているのだ。 「さぁ、お前の才能を私に見せてくれ」 狂った笑みを崩さぬまま、更に魔力を高め、術式を発動する。 「………ッ!?あ…」 床に黒い水溜まりのような闇が出現した瞬間、闇から漆黒の荊が延び、ニルの身体を拘束する。 「ひ……あ、あァァァァァアアアァアア!!!!」 身体を這うように絡みついた荊と身体に刺さる棘の痛みに悲鳴を上げる暇もなく、体中に走る激痛に叫ぶ。 「ニ……ル…ッ!!!」 ギシギシと、腕と足、首に繋がれた鎖を千切ろうと力を込めながらニルに手を伸ばすが、傷だらけの身体では力が出ず、届かない。 (守るって…決めただろ!!力出せよティル=マキュリー…~~ッ!!!) .
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