第8章『二度目の任務と小さな守護者』

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未だ成熟しきっていない精神で懸命に考え、打ち立てた誓い。 (俺の命に代えてもって、決めただろぉ!!) ただ一人の妹を守る。兄として、男として。 だがどれだけ手を伸ばしてもニルに手が届くことはなく、激痛に叫ぶニルをただ見ることしかできない。 「ァァアア…!…………」 自らの無力を嘆き、悔やむ暇もなく、変化は終わりを告げ、ニルは糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。 「……ニル…?」 ポツリと、ティルが声をかけると、ニルはピクリと反応し、ゆっくりと身体を起こす。 「ん……お兄…ちゃん…?」 そして虚ろ気な瞳をティルに向けたとき、ティルは短い人生の中で、一番の絶望を感じた。 「ふ、ふはははは!!やはり!!やはり素質があった!!我が一族であるという証が!!ははははは!!」 ゲイツの嗤いの声も、ティルの耳には入らなかった。 ただ、ニルの『瞳』に起きた変化に、絶望を感じていたのだ。 「ニル……」 絶望の中、絞り出すように出された声の次の句が出ることはなかった。 「これで貴様は用済みだ『小僧』」 ニルは別人のように豹変してしまったゲイツを呆然と見ながら、唐突に襲いかかってきた眠気に意識を失った。 ※
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