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『起きろ』
朧気な意識の中、誰かの声で目を覚ます。
「……あなたは、だぁれ?」
未だ覚醒しない意識を振り払うように首を振ってから、目の前の存在に尋ねる。
ニルの目の前にいるのは漆黒のローブを身に纏ったような形の人影だ。
ふと辺りを見回せばそこは意識を失った屋敷の部屋ではなく、真っ暗な闇の中で、目の前の人影すらまともに見ることができない。
『"誰"…か。違うなお嬢さん。
ワタシはキミの"力"だ。人じゃあない』
そう言ってニルの頭を撫でる。その手は、思ったよりも暖かく、柔らかかった。
「ちから…?わたし、ちからないよ?」
未だ6歳であるニルに人影の言葉の意味は判らず、首を傾げている。
『ふふっ、キミがもう少し大きくなれば解るさ。ワタシが何なのか、ワタシが何故自我を持っているか。と、キミにはまだ早いみたいだね』
人影の言葉に頭の上に?を幾つか浮かべたような顔のニルに、人影は優しげな声で話す。
『そうだな…ワタシの事は"死神"とでも呼んでくれ。他に名は無いからね』
「しにがみ…さん?」
『うん。死神さんだ。
--さて、今日はここまで。次に逢う時は、キミに神秘が使えるようになってからだね』
「……え?」
自らを死神、と名乗った人影は、一方的に会話を打ち切ると、ニルの頭を撫でていた手に少し力を込めて
『……ごめんね』
--その言葉をニルが聞き取った瞬間、ニルの意識は再び闇に落ちていった。
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