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--夜が明け、窓から差し込む光で意識が覚醒へと向かう。
ん、と小さな声を上げ、目を開ければ見慣れた天井がそこにあった。
「……朝、か…ふあぁ……」
眠たげな声と共に体を起こしたのは蒼い髪の少女、ニルだ。
「今日はいい天気……」
もぞもぞと布団から出たニルはん~、と伸びを一つ。目尻に少し欠伸による涙を浮かべながらゆっくりと着替え、10分ほどで簡単な朝食を済ませ、鏡の前に立つ。その手には髪留めが握られており、伸ばされた前髪の下の顔は緊張して強張っている。
「……よし…っ!」
ちょい、と前髪を分け、髪留めで留める。あまり瞳を見せられなかった彼女にとって、それは初めての経験で、髪の隙間から覗く蒼の瞳は不安に揺れていた。
(可愛くないって言われたら、立ち直れないかも)
いつもと違い、緊張で鼓動を早める胸を押さえて深呼吸を一つ。よし、と小さく零したニルの脳内では、昨夜の出来事が鮮明に思い出されていた。
『自分の瞳が、何なのかを知った夜』のことが--
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「アナタの魔眼。其の名は---」
『--はーいちょっと待った。それは私から説明させて貰うよー』
ハイネの言葉を遮ったその声は、確かにニルの口から発せられていた。
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