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「!……それ……って……」
『口調が一定しないのは許してほしい。約200代の覚醒者総ての記憶と人格を統合しているからな……しかしその大元になったのは私、ニルヴァーナ=モーゼルなんだ』
時の流れの中で、その存在を消されていった者達がいる。限られた人々の中でひっそりと語り継がれてきた彼らの噺も時と共に風化し、遂にはその血を引くものも自らがそうであるとわからなくなる程に忘れ去られていった。
それでも血によって痕に覚醒する者も存在し、子孫が混乱し道を踏み外さないようにと、痕に宿ったニルヴァーナによって考案されたのが死ぬ寸前に記憶を痕に、ニルヴァーナの魂に刻み込んで残し、覚醒者に伝えるという手段であった。
それによってニルヴァーナの人格は薄まりはしたものの、確かに後世の覚醒者に道を示せたのだ。今まで犯罪的などが覚醒者の内にでていないことも手段の有効性を顕している。
『死痕(ワタシ)に覚醒した中には貧困に苦しむ者や、ありとあらゆる不幸に見舞われた者もいた。だが私達が道を示してその者達を導いた。ニル、キミもその一人なんだよ』
「私……も?」
『そうさ。君は気付いていないようだが、あのまま私に喚ばれずに死痕を暴走させていれば、君は両親、兄だけでなく自らの命が尽きるまで周りを殺し尽くすバケモノになっていたんだ』
ニルヴァーナの言葉に意識を失った時のことを思い出そうとするニルだが、ただ目の前が真っ白になったことしか思い出せずに、首を傾げる。そんなニルを見てからからと笑いながらニルヴァーナはハイネに向き直る。
『ハイネ、後は任せても?』
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