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符がハイネの身体に還った瞬間、ニルの瞳が朱く、妖しい光を放ち、入学式時点での魔力測定値を遥かに上回る魔力がニルの身体から発せられる。
「なに……こ……れ」
符を受け取ったときから蓄積されてきた魔眼(スティグマ)の魔力が一気に溢れ出したことによってニルの足下の草花は枯れ、再生し、また枯れ--と急激な変化を見せ続け、遂には塵となって消えてしまい、ニルの周囲の空間には何も残っていない。当のニルも溢れ出した魔力によって数センチ浮かび、困惑した表情を浮かべている。
「-----」
--と、この場の誰にも理解できない発音で言葉を発したハイネによってニルの周囲を渦巻く魔力は消え去るが、直ぐに魔力は溢れ出し、ニルの足に地につくことはなかった。
「……ニルさん、落ち着いて聞いてください」
そうか、と小さく呟いたハイネは真剣な表情を崩すことなく声をかける。
「貴女の成長と共に増えた魔力によって魔眼は強力になっています。今此処で魔眼を抑え込まなければいずれ周りの友人や家族を傷つけてしまう。貴女はそんなことは望まない、そうですね?」
端から見ればはいと答えて当たり前の質問。だがニルにはそれが凄く重要な質問だった。
--殺せ
それは何処からか。
---コロせ
響く怨嗟の声。
----コロセ
(イヤだ……わたしは……)
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