第9章『発現』

9/12
前へ
/202ページ
次へ
『--主』 魔力の嵐の中聞こえた穏やかな声。何十、何百にも折り重なった声色には今は優しさしか含まれていない。 「----」 暴風にかき消されるくらい小さな言葉。ニルの身体に溶け込みながら口を借りたニルヴァーナによるそれはニルの決意を確固たるものとするのに十分なものだった。 ---- 「--ニルさん、大丈夫ですか?」 ふと、眼を開けば星空とハイネの微笑みがニルの眼前にあった。先ほどまでの暴風は嘘のように消え失せ、ハイネの結界もいつの間にか効果を失っている。 「わた……しは……」 身体を起こせば周りにはニルヴァーナが現れる前の光景が広がっており、先ほどの出来事が嘘だったかのように思えてくる。 『主、大変なのはこれからですよ』 (そう……だね) それもニルヴァーナの声によって現実であったと認識する。 「大丈夫そうですね。魔眼こそ発動していますが、体内魔力も安定していますし、直ぐに慣れるでしょう」 『さて主、今日の仕上げをしなくちゃ』 「仕……上げ?それって……最初に……言ってた……」 『そう。魔眼は発動状態にある限り魔力を消費するから、待機状態にするのを覚えて貰わないと』 「でも……全然感覚が……変わらないよ?」 .
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3362人が本棚に入れています
本棚に追加