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「魔眼という力は稀少で、故に周りに与える影響は大きい。善悪問わず人の注意を引く程度には」
だからこそ、とハイネが続ける前にニルは立ち上がり口を開く。
「わたしは……最近までずっと……この目が嫌いだった……。でも……今は……そうじゃない」
話しながらニルの脳裏には小等部での出来事が過ぎっていた。子供は純粋だからこそ残酷である。それは虐めという形にならなかったのが唯一の救いか。気味悪がって避けられたのを思い出せば今も辛いが、この目は友達を助けることもできた。それで理由は十分だ。
「でも、……やっぱり……目立つのは……苦手だから、隠したい……かな……」
僅かに緩んだ口元、確かに笑みの形を作ったニルにハイネは目を少し見開く。
「……余計なお世話でしたね。貴女は十分--」
言葉の続きはなく、代わりにニルの眼前に手鏡サイズの氷が現れる。そこに写るニルの瞳は、蒼く優しげな光を宿していた。
「……あ……」
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