第9章『発現』

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今日に限ってラルフ達は先に学校へ行っており、寮のエントランスにはミーシャとハイネのみが待っていた。 「……ニ、ニル……どんな心境の変化があったんだ!? 少し前まで絶対に眼は見せたがらなかったのに」 エントランスの転移陣に現れるなりミーシャが驚きの声を発する。口を半開きにした後、詰め寄ってきたその表情たるや、ニルが今まで見たことのないほど鬼気迫るものであった。 「……や、やっぱり変……かな……?」 「い、いやそんなことはないぞ! いい傾向だ。髪留めも似合っている」 俯いてしまったニルにミーシャは少し慌てたようにそう付け加えた。 ニルもその言葉に少し元気を取り戻したようで、安心したように笑みをこぼすと行こ、と一言。ゆっくりと歩き出した。その歩調は少し緊張しているように早く、そわそわしているようにも見える。 「なぁハイネ」 「何ですか……?」 ニルの少し後ろについて歩きながらミーシャは不思議そうに口を開く。 「ニルはいったいどうしたんだ?昨日まではいつも通りだったような感じがするんだが……」 「……何か気持ちを変えるようなことがあったんでしょう」 何かは知りませんが、と付け加えたハイネだったが、目の前を歩いていたニルが何もない所で躓いたのを見て苦笑する。 「ですが、あのままでは少し心配ですね」 「……だな」 顔を見合わせ、ニルの隣に並ぶ。躓いて羞恥で少し冷静になったのか、頬が少し朱いニルと穏やかに談笑しながら三人はゆっくりと通学路を歩いていった。 . --余談であるが、ニルが教室に着いた時、教室にいた誰もが驚き、ラルフ達も目を見開いて固まり、ちょっとした騒ぎになったとか。 .
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