第4章『一つの涙と小さな覚悟』

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「しっかし、何もいねぇなぁ…」 ユグノー森林を歩き始めて数十分、ラルフが両手を頭の後ろで組みながら退屈そうに言った。 「確かに…いくらトロルが出現したとは言え、生物がいなさ過ぎる…」 「ユグノーの一体すら見かけないし…」 ミーシャもラルフに同意し、アルも不振に思って辺りへの警戒を強めている。 (おかしい…トロルの魔力なんか感じない…この魔力はまさか…) ハイネは何かに気づいたように思考を巡らせるが、考えが纏まらない内に背後の草木が揺れる。 「全員武器を構えて、ニルさんとアルは後ろに!」 ハイネの焦ったような声に五人はすぐさま反応して武器を構えるが、木々の隙間から出てきたモノを見て動きが止まってしまう。 「あ…あれは…トロルじゃない…」 ミーシャはハイネ以外の誰もが正体が判らず困惑する中、ポツリと呟く。 「あれは……《ガルン》…Aランクの魔物…」 木々の間から出てきた魔獣は黒い体皮を持ち、馬の顔に人間の体、2メートル強の戦斧(ハルバード)を持つAランクの魔獣ガルン。
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