第4章『一つの涙と小さな覚悟』

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ハイネがガルンと戦っていた頃、ミーシャ達は森の中を走っていた。 「ハイネは大丈夫かな?」 「わからないが信じるしかない…」 走りながらもアルはハイネの心配をし、ミーシャも心配な気持ちをかみ殺して走っていると不意に木々がざわめく。 「も…もしかして…」 「てめぇ……ハイネはどうしたぁぁ!!」 ニルは木々から出てきたもう一体のガルンを見て固まり、ラルフはハイネと戦ったガルンだと勘違いして篭手【紅蓮甲楓】に炎を纏わせてガルンに殴りかかった。 《グルァァァァァ!!》 「ぐはぁっ…く…そ…」 しかし、怒りに任せた単調な突撃が通用する訳もなく、振るわれたハルバードによってラルフは肩から腰までを深く切り裂かれてしまった。 「ラルフ!!……ぅっ!!」 「ぁぁ!?……ッ!!」 ミーシャとニルはラルフに向かって叫ぶが、傷を見た瞬間込みあがる吐き気に口を閉ざした。 ラルフは両断こそされていないものの、その傷口は深く、赤黒い血が地を濡らしている。 「彼の者を黒き力で縛れ!『アウゲイアス』!!」 《ガルァァァァ!!》 アルはハイネと同じ魔術でガルンの動きを止めようとするが、ガルンは咆哮だけでソレを跳ね除けてしまった。 「ハイネはあんなのに捕縛魔術かけたのか…クッ…!?」 アルは愚痴をこぼすようにそういってフィンを見る。 「どうする…アル!?」 「さすがにヤバいね…僕らじゃかなわない…」 「でもほっといたらラルフもみんなも死んじまう!!」 「でも…ッ!?」 フィンとアルは言い合うが、何も案が出るわけがなく、ガルンが接近するのをただ見ていたが、ぎりぎりフィンがアルを蹴り飛ばし、自分も飛びのいたおかげでハルバードによる一撃は辛うじて避けた。
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