第6章『魔王と英雄と過去』

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「くっ…!」 ハイネは急いで封印の水晶に触れ、状態を確認する。 「(奴が『シン』にたどり着くまではまだ数年はかかる…か…)…師匠」 ハイネは何かを思案していたが、唐突にエルヴェを呼ぶ。 「わぁってるよ…俺に"担い手"をやれってんだろ?」 「はい…【…………ーーーーーー 「ライアン老」 微睡むような意識の中、ハイネの声がライアンの耳に届き、ライアンはいつの間にか閉じていた目を開く。 「…まだお主が遺跡に行って安全である理由を聞いていないのじゃが?」 「はい。ですが、彼処からは例えライアン老であろうとも話せないのです…。そして、ここからは口頭で」 ハイネはライアンの質問を申し訳なさそうに流すと、その手に、先ほどの短剣を召喚した。 「コレは如何なる結界を破る力を持つ短剣…名を『障ヲ乖離ス星ノ生命(イノチ)《エリア=ティンカー》』」 『障ヲ乖離ス星ノ生命(エリア=ティンカー)』。それはハイネが黒白を用いて作り出した、ハイネが考えうるほぼ全ての結界を無効化する結界を破る為だけの短剣で、それ自体に強度は存在せず、紙すら切ることができない。 「先ず…先ほど御見せしたように、【■■■■■】の本来の名は『シン』。真名『シン=アストラム=レン=エーデルハイト』。古代の英雄にして、世界が崩壊の危機に瀕した原因の一端を握っていたために、死後、魔王として祀り上げられた数世代前(黒白)…これは肉体。 そしてもう一つ…魂や心をつかさどっているのはシンの心の闇や悪夢、恐怖などの幻想が具現化した空想でありながら現界してしまった魔王(Accra(アクラ)) 本来であれば《Accra》は長い封印の中で再び幻想、空想としてシンに吸収される筈だったのですが、とあるきっかけで数年早く封印が解けたために再生してしまったのです」
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