第6章『魔王と英雄と過去』

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「世界崩壊…?それに原因の一端?どういう……」 淡々と話すハイネにライアンは質問を投げかけようとするが、ハイネはそれを手で制し、弾かれたように南東…遥か遠い【ガブリエル】の方向を見た。 「…まさか…速すぎる…!!」 焦ったように呟くハイネの手の中にあるエリア=ティンカーが何かに反応するようにカタカタと震え、次の瞬間、ピキッという音と共に刀身に皹が入った。 「ど、どうしたというのじゃ?」 ハイネの態度の急変にライアンは僅かに動揺を見せながら問う。 「…このエリア=ティンカーは遺跡の結界とリンクしています…」 「まさかお主が張った結界が破れかけているというのか!?」 ライアンはハイネの力の大きさを全てとは言わないが、把握しているため、驚愕の表情を浮かべる。 「…以前私が張った結界は『魔障壁(マショウヘキ)』。悪しき力、魂など弾き、中に在る存在の力を抑える結界です。それが破られかけているということは、何者かが外部から干渉したか、【魔王】が完全に力を取り戻したか…。 しかし、後者は結界の損傷具合からして有り得ないのでご安心を。絶対に騒ぎにはしませんし、世界への干渉もさせません。 あ、そうそう、この事についての説明は後日、ということでお願いしますね。『転移』」 ハイネは一方的に説明を済ませると転移でその姿を消した。 「…ー【因みにアランさんも真実を知っていますが、聞いてはいけませんよ】…か…まるで心を読んだかのような忠告じゃな…」 ハイネが転移でいなくなった後のギルドマスター室、ライアンはいつの間にか机に置いてあったハイネからの忠告を見つめながら苦笑を零し、怒鳴った時に散らかった書類などを魔術で片付け、職務に戻った。
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