第6章『魔王と英雄と過去』

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「…なんとか間に合ったか…」 そんな声と共にハイネとリューディアが現れ、ハイネは右腕に封印の時の蒼の光を灯らせ、左手に朱刀を持っている。 「リューディア、頼む」 「えぇ。『明鏡止水』…!」 蒼の水晶を円形の結界が覆い、水晶から漏れ出す障気がゆっくりになる。 『明鏡止水』、これは結界の中の時間を遅くする結界系神術。 補足しておくと、神術には、攻系、防系、結界系、治癒系、陰系があり、それぞれが最上級魔術、法術並の威力を持っている。 「よし…《エリア=ティンカー》…構成魔力理解…還元…『破壊』!」 結界が出来上がるのを確認したハイネは、既に皹割れ、砕けかけたエリア=ティンカーでアイラとセリナの眠る結晶を破壊する。 「…う…ここ…は…?」 先ず目覚めたのは、アイラ。 そして目の前のハイネとその奥の水晶を視界に捉えた瞬間、跳ね上がるように立ち上がり、手に紅い大剣を召喚する。 「…まさか…主…が…?」 「はい。少々予定外の事が起きまして、封印が解けかけています…。 …すべきことは理解していますね?」 ハイネは水晶を睨んでいるアイラに向かって静かに問い、アイラは無言で肯定を示す。 「さて…セリナ!起きて下さい」 「んぁ……?…ッ…!?!!」 何とも間抜けた声を出してセリナは起き、ハイネを確認すると恥ずかしかったのか赤くなって俯く。 「セリナ…今…は、非常…事態…。 主…が…そして…《Accra》が…目覚める…」 「…!?本当に!?」 セリナはアイラの言葉に弾かれたように顔を上げ、水晶を見、ハイネ、アイラを見て、状況を理解する。
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