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次の日、僕は小学校の校門で有香を待った
「一緒に帰ろっか」
そう言った時、有香はまだ怒っているのか横を向いて僕を拒絶した
とりあえず並んで歩いて
何も言わない有香に
「手、つなぐ?」
いつもなら自分からねだってくることを聞いた
「…いいっ」
これはいよいよ嫌われたなぁ
元気のない笑い声をあげて天を仰いだ
どうするべきだ
「アイス食べる?」
食べ物で釣ろうと考え
「いらない」
あっさりと切られ
僕は一人でウンウン悩みながら
どうしよう
おもちゃ…は別に欲しくないだろうし
そんな汚い考えをめぐらして
「……」
有香が立ち止まって下を向いていることにすぐに気がつかなかった
「……どうしたの?」
振り向いて膝を抱え、有香を同じ目線で聞いた
「……」
ずっと黙ったままの有香に不安を覚え
「有香?」
また、聞いてみた
「…お兄ちゃんは」
うん
「有香のお兄ちゃんじゃないから…」
うん
「わ、わがまま…ばっかり…だとっ……」
うん
「めいわく…ヒック……だ、と…思う…からぁ」
最後の方は言葉にならないようだった
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながらしゃべる有香はとても小さくて
「ごめんね」
僕はその小さな体と気持ちを
有香の健気な気持ちに嬉しく思いながら
やさしく抱き寄せた
しばらく泣き続けた有香の手を握り、一緒に歩いた
まだ恥ずかしいのか下を向いて歩く有香が
「……アイス」
ポツリと呟いた
「ん?」
「アイス…食べたい」
その日の帰り道は、どこかバニラの甘い香りがした
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