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「か、…えで…!」
私は楓の名前を呼んだ。
走ったので呼吸がうまくできない。膝に手を突き、酸素を求めた。
楓は振り返らずまた進んでいく。
私は追い掛けようとしたけど、足がうまく前に出ずに転んでしまった。
膝に痛みを感じる。
もうっ、転けてる場合じゃないのに…!
『大丈夫~?』
楓かと思って顔を上げると知らない二人組の若い男の人が私に手を差し出してた。
『俺が介抱してやるってかぁ!』
男の人が笑った。
「大丈夫ですから……」
私がそう言って立ち上がると腕をガシッと掴まれた。
『どっか飲みにでも行こーよ』
うっ、お酒臭い。強い力で引っ張られる。
振りほどけない…!
『すいません、俺のツレなんで』
私が引っ張られていこうとした瞬間、逆側の腕を掴まれそっち側によろめいた。
嗅ぎ慣れた香水の匂い。
………楓だった。
楓は男の人達に頭を下げ、荒々しく私を引っ張った。
『隙があり過ぎってさっき言ったばかりなのに』
小声で楓が言った。
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