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楓は止まらず歩いていく。
私は引っ張られたまま早足で着いていくしかなかった。
声を掛けようにもなんて言ったらいいのか分からず、歩き続けた。
少し歩くと駐車場に見慣れた楓の車が見え、楓はさっと鍵を開けると"乗って"と言って私を無理矢理助手席に押し込んだ。
「わっ…!」
ドアを閉め、運転席の方に歩いていく楓を目で追う。
運転席のドアが開き、
『うん、今一緒。……分かってるって。はい、じゃあね』
携帯を閉じながら運転席に楓が乗り込んできた。
『優達には連絡したから。ミサちゃんが優送ってくれるって』
「あ……そ、そうなんだ」
まだ頭がついていかず、生ぬるい返事をしてしまった。
『送るから』
そう言って、エンジンをかけようとする楓の手を掴んだ。
「ちょっと待って!」
『何?』
勢いで腕を掴んだまでは良かったけど、何を言うか考えてなかった私は言葉につまった。
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